ワンポイント講座 No.1

第4状態としてのプラズマ

 プラズマは,一口で言えば「電離気体」です.すなわち,原子から電子が飛び出したことで発生する正電荷のイオンと,負電荷を持つ電子が共存している状態です.プラズマは「物質の第4状態」とも呼ばれています.

 物質の第1状態,第2状態,第3状態とは,それぞれ,「固体」,「液体」,「気体」のことです.もっとも身近な例は,「氷」,「水」,「水蒸気」です.水は0℃以下にすれば凍って固まります.これが「固体」.氷を暖めて0℃を越えると,溶けて流れる「水」になりますが,これが「液体」.やかんに水を入れて,コンロで沸かしてやれば,100℃を越えたところで水蒸気になって空気中に拡散していきますが,これが「気体」です.「固体」,「液体」,「気体」の違いは,「水」と「油」の違いのような物質の違いではありません.物質としては同じものですが,その中に含まれている分子の存在形態が違うのです.これを物理では「状態」と言います.

 それぞれの状態の違いを分子レベルで見てみましょう.水の化学組成はH2Oです.つまり,水素(H)原子2個と,酸素(O)原子1個がくっついでできたものです.もし,原子が見えるくらいに氷(固体)を拡大できれば,下図のように見えます.

 紫の球が酸素原子,赤い球が水素原子を表しています.これらが結合して3個の球からできているのが水分子です.固体である氷は,このように整然と水分子が並んでいて,各分子が定位置からあまり大きく動けない状態なのです.動けないのは,水分子間には弱いながらも引力があり,この引力で引き合って結合しているからです.のりでビーズをくっつけた様子を思い出せばいいでしょう.固体が全体の形を崩さずに動くことができるのは,このような分子間の結合力のために,分子が定位置周辺に局在しているからです.

 この「のり」の接着力には限界があります.くっついている分子にエネルギーを与えると動きが激しくなり,結合力を振り切ってバラバラになります.これが「溶ける」という変化であり,溶けた固体は液体になります.水分子でいえば「氷が水になる」ということです.この「エネルギーを与える」という行為が温度の上昇に相当します.

 上図のような静止画では,ばらばらになった状態しかわかりませんが,実際にはそれぞれの分子が自分勝手に動き回っています.なお,水(液体)と水蒸気(気体)の違いは,ぱっと見にはそれほど大きくありません.上図はどちらかというと「気体」のつもりで描きました.液体の場合は,分子が自由に動いてはいるのですが,のりの影響が大きく残っているため,分子と分子がそれほど離れられません.このため,液体での平均分子間距離は固体とさほど変わらず,固体と液体の密度はあまり変わりません.氷が水に浮くのは氷の密度の方が水の密度よりも低いからですが,それほど大きな違いではありません.カップに水を入れて冷凍庫で凍らせても体積はそれほど変わらないでしょ.

 これに対し,気体はのりの影響がほとんど無く,分子は基本的に他の分子の影響をほとんど感じずに飛び回っています.液体と違って,気体の状態では分子間の距離が非常に大きくなり,密度は非常に小さくなります.水を沸騰させると体積が非常に大きくなるのは,気体になることで分子間距離が一気に大きくなるからです.この体積が大きくなることを利用して,ものを動かすのが蒸気機関です.

 温度をさらに上げると,まず分子がバラバラになる「解離」が起こります.水で言えば「水分子」が「水素原子」と「酸素原子」に分解することです.

 さらに温度を上げると,原子もバラバラになって内部の構成要素である「イオン」と「電子」に分かれます.これが「プラズマ」です.

 上図では,イオンは原子と同じ色にしていますが,実際には緑の粒の電子が出てしまったので中性ではなくなっています.このように,温度を上げることで「気体」と違った新しい状態になっているということを強調する時,「第4の状態」という表現を使うのです.

 重要なのは,「温度を上げる」ということです.実は「温度を上げる」ことは,原子・分子の「運動エネルギーを上げる」ことに相当します.このあたりは3回目の講義で説明する予定なので,本講座はこのくらいにしておきましょう.

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