ワンポイント講座 No.6

屈折率と位相速度の関係

 図のように,2種類の異なる透明物質(媒質1と媒質2)が平面を境界として接していて,媒質1から境界面に向かって入射した光が媒質2に入ったときに,光の進行方向が変化するのが「屈折」です.曲がる角度の変化の度合いを「屈折率」といい,次式で定義されています.


屈折率が1より大きければ図のように入射角θ1よりも屈折角θ2の方が小さくなり,屈折率が1より小さい場合には入射角よりも屈折角の方が大きくなります.

 屈折率は,入射側の媒質1と入射された側の媒質2の物質によって決まります.媒質1を真空としたときの屈折率nを,「媒質2の屈折率」といい,媒質2を構成している物質固有の性質の一つです.媒質1の屈折率をn1,媒質2の屈折率をn2とすれば,


となります.空気の屈折率は1に近いので,空気からガラスなどの物質に入射するときの屈折率は,その物質の屈折率にほぼ等しくなります.

 さて,この「屈折」という現象がなぜ起こるのか考えてみましょう.ワンポイント講座No.5で説明したように,光とは電気の波のことです.もう少し正確にいえば,電界と磁界の波,「電磁波」です.波の波長をλ,周期をTとすれば,ワンポイント講座No.5で説明したように,波長と周期の比が波の山の進む速度「位相速度」になります.

今,「平面波」を考えます.平面波というのは,同じ位相の点をつなぐと平面になる波のことです.この平面を「波面」といいます.例えば,波の山を通る波面だけを選んで図に描けば下図の線のようになります.

 波面は光の進行方向に垂直です.このため,図のように入射角と屈折角は波面と境界面との角度に等しくなります.このとき,境界面での波面の位置が媒質1側と媒質2側で一致しているところがポイントです.これは,入射光が境界面に当たったときの境界での振動が媒質2中の光の波を生むためです.このため,媒質1での光の周波数は媒質2に入っても変わりません.すなわち,媒質1と媒質2における光の周期は等しくなります.

 しかし隣り合った波面の間隔は波長に等しいので,図でわかるように媒質1での波長λ1と媒質2での波長λ2は異なります.境界面上での波面間の距離を図のようにlとすれば,次の関係が成り立ちます.


 よって,屈折率はそれぞれの媒質中での波長の比に等しいことがわかります.

 上記のように,光の周期Tは媒質1と媒質2で共通なので,屈折率は次式のようにそれぞれの媒質中での光の位相速度の比になります.

よって,位相速度がvpの物質の屈折率nは,

となります.cは真空中の光の速度です.

 このように,物質中の位相速度と屈折率には密接な関係があります.屈折という現象は,光が物質に入ろうとしたときに,急に減速するため,つんのめったと考えることもできます.逆に,プラズマ中では光の速度が速いため,流されて浅く進むというわけです.

 多くの物質中では,光の位相速度は周波数にも依存します.このため屈折率が周波数によって異なるので,物質に光を当てると,色が分かれて見えます.これを「光の分散」といいます.ワンポイント講座No.5で出てきた「波の分散」と同じ現象です.例えば,虹の七色は太陽光が水滴で反射するときに光の分散によって色が分離して見える現象です.雨上がりに空を見上げれば,光の位相速度の差が感じられるというわけなんですが,それじゃあロマンがないですね.

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